Ethereumキラーの1つであるスマコンプラットフォームNervosが、CoinList上のトークンセールで$72millionを調達し、2019年11月にメインネットをローンチしました。
他と比べて特徴的なのがトークンの報酬制度と配布です。どのようなプラットフォームか、そしてどのようなトークン設計がしてあるかを見ていきましょう。
概要
パブリックチェーンで、Proof of Workのセキュリティを持ちながらスマートコントラクトのプラットフォームです。2018年の初めに開始し、エンタープライズユーザーの採用に対する課題を解決することを目的としています。既存のブロックチェーンは、企業のセキュリティ要件とパフォーマンス要件の両方を同時に満たすことができないため、そこを解決しようとするパブリックチェーンです。
セキュリティ重視のレイヤー1のチェーンと、性能の良いアプリケーションチェーン(レイヤー2)の2つのレイヤーに分かれています。以下の図でいうと、Nervos CKB(Common Knowledge Base)がレイヤー1となる土台のブロックチェーンで、Axonがレイヤー2になります。
スマートコントラクトとレイヤー2でのスケーリングを可能にしつつ、Proof-of-Workコンセンサスのセキュリティを持つように設計されています。
Axonは、Nervosのコアチームが開発したNervos CKBのレイヤー2サイドチェーンと理解すれば良いと思います。高性能のスマートコントラクト実行環境を提供し、最終結果はCKBにインプットします。Plasma同様、Axon上の資産を破棄し、その証拠をCKB(レイヤー1)に中継し、CKB上の資産を取り戻すことができます。
トークン
ネイティブトークンとしてのCK Byte(CKB)は、リソース管理とマイナーのインセンティブに使用され、トークン所有者はCKBブロックチェーン上のステートのストレージスペースをつかうことができます。またホルダーは、Nervos DAOにCKBをロック(ステーキング)し、報酬を受取ることができます。これでインフレの希釈分を相殺します。
たとえば、アリスが1000 CKBytesを所有している場合、それらの1000バイトを使用して、別のアセットを保持したり、アプリケーションのステートのストア、CKBブロックチェーン上のその他の種類の共通知識をストアできます。
トークン配布
このプロジェクトが他と比べて特徴的なのがトークンの報酬制度と配布です。ジェネシスブロックには336億 CK Byte(CKB)、マイニング報酬のためにさらに336億 CKBytes発行予定で、4年ごとに半減期があります。さらにそれに加えて、年間13.44億 CKBytesの継続的なセカンダリ発行があります。
セカンダリ発行
セカンダリ発行がどのように配布されていくかを見ていきましょう。セカンダリ発行の報酬が渡されるのは以下のプレイヤーです。
1)マイナー
2)NervosDAO(特別なスマートコントラクト)
3)トレジャリー(基金)
・マイナー:
「既存のすべてのCKBytes」のうち「使用中のCKBytes」の割合で、セカンダリ発行分がマイナーにわたります。
・NervosDAO:
トークン所有者は、CKBytesを使用してステートを占有しない場合、NervosDAOと呼ばれる特別なコントラクトにデポジットしロックできます。いわゆるステーキングですね。NervosDAOはセカンダリ発行の一部を受け取れるようにすることで、長期保有者の持ち分の希薄化を相殺します。
・トレジャリー(基金):何にも使われていないトークン(ステートのストアに使うこともNervosDAOにロックもされていない流動しているCKByte)については、セカンダリ発行報酬がトレジャリーに送られ、プロトコルの維持と開発のための資金が提供されます。
※ちなみに上のことからわかるようにCKBytesを使用してステートを保存(CKBブロックチェーンのステートを占有)するトークンホルダーは、セカンダリ発行からCKBytesを受け取れません。インフレによる税(マイナーに対する税)としてとらえることができます。
トレジャリーはしばらく使われない最終手段
トレジャリーは、ジェネシスブロックでリザーブされているエコシステム・ファンドを財団が使い果たすまでは有効になりません。トレジャリーが有効化されるまでの間は、セカンダリ発行でここに流れる分はすべてバーンされます。トレジャリーは、ガバナンスプロセスを経て承認されてはじめて有効化され、ハードフォークを通じて実装されます。
セカンダリ発行の例
セカンダリ発行がどのように分配されるか例をあげてみます。
セカンダリ発行イベントの時点で、CKBytesの60%がステートの保存に使用され、35%がNervosDAOにロックされ、5%が何もされずに存在していたとします。
セカンダリ発行分のトークンは60%がマイナーに、35%はNervosDAO(ロックされたトークンに比例して分配されます)に送られます。そして残り5%は、トレジャリーが有効化されるまではバーンされます。
マイニングの報酬がなくなるとこのセカンダリ発行(1年あたり13.44億 CKBytes)のみが発生することになります。
初期発行分について
最初の336億 CK Byte(CKB)が発行され、内訳は以下のようになっています。
- 25%がジェネシスブロックでバーンされ、供給から除外
- 20%をパブリックセール投資家に割り当て
- 14%がプライベートセールの投資家に割り当てられ、2年間で権利確定(べスティングの完了)予定で、3分の2がメインネット時にリリース
- 15%がコアチームに割り当てられ、4年間で権利確定(べスティングの完了)予定で、3分の1がメインネット時にリリース
- 18.5%がエコシステムファンド
- 5%が戦略パートナーのためにリザーブ
- 2%は財団のためにリザーブ
- 0.5%がTestnetのインセンティブ
なぜ発行するトークンの数を減らすのではなく、発行してバーンしたかですが、このバーンされた84億のCKBytesは供給からは除外されるものの、通常のバーンと異なり、消えることにはなりません。そのためセカンダリ発行に配布に影響を与えます。
Nervos Foundationは、バーンする25%のうち、15%を使ってデータ書き込みに使い、他を10%CKBytesをロックせず浮遊させておいてます。そうすることで必ずこの15%はマイナーへ、10%はトレジャリーでセカンダリ発行の報酬が回るようにしたというわけです。

これまでの話をまとめると以下のようになります。
初期供給 | 33,600,000,000.00 |
---|---|
創設者とプロジェクト | 40.5% |
投資家 | 34% |
報酬 | 25.5% |
これまでの資金調達
1.シードラウンド
シードラウンドとしてのトークンのプレセールで、$28 m を調達しています。
投資家としてはPolychain Capital, Sequoia China, Wanxiang Blockchain, FBG Capital, Blockchain Capital, Dekrypt Capital, Breyer Capital, 1confirmation, Multicoin Capital, Matrix Partners China, などが入っています。詳細はブログポストにかかれています。
2. パブリックセール
CoinList上のトークンセールで$72millionを調達しました。China Merchants Bank International(CMBI)、Polychain Capital、Blockchain Capital、Hashkey、MultiCoin Capital、Distributed Globalなどの投資も含まれています。
このときの禁止国は以下で、日本も禁止されていました。
China, Cuba, Korea, Democratic People’S Republic of, Korea, Republic of, Japan, Syrian Arab Republic, Ukraine, Iran, Islamic Republic
マイニングのアルゴリズム
Nervos NetworkのCKBコンセンサスは、Proof-of-Work(PoW)とNakamotoコンセンサスの応用です。マイニングのアルゴリズムはNC-Maxと呼ばれるもので、ネットワーク状態に応じてマイニングの難易度を調整し、ノードのネットワークが適切に接続されている場合はスループットを向上させ、ブロックオーファンレートが特定のしきい値を超えるとスループットを低下させます。
Cell model
Cell modelという方法で、トランザクションの並列処理を提供し、軽量クライアントを可能にしています。以下の動画から概要を見ることが可能ですが、並列処理です。
Nervos Cell Model
最後に
調達についてはこの地合でかなり大きい額だと言えます。同様のパブリックチェーンかつEthereumキラーの1つのKadenaも同じくCoinListでセールが今日あたりに始まりましたが、大きく集めるかもしれません。
またBitcoinではマイニングが終わるとトランザクション手数料のみがマイナーのインセンティブの予定ですが、Nervosはセカンダリ発行という形でマイナーにインセンティブを載せています。
こういった作りは、スタンダードにならずとも経済実験として試され、他のプラットフォームが真似tしていくだろうと思います。
エンタープライズにフォーカスしていますし、ステーキングもできるプラットフォームなので、利用率をウォッチしていく価値はあるかなと思います。
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