執筆:Da-
以前にDaiの派生としてレポートした idle がV3になってとても良いDeFiサービスになっていたのでレポートです。手数料もかからず利率とまさに前回のレポートでも触れていた、自動でのリバランスサービスに加えてセキュリティリスクも考慮するようになりました。
1.idleの概要
idle(idleDaiから改名しました)はロボアドのように、選んだ方向性に応じて自動で最も効率の良いレンディングプラットフォームに配分するDappsです。
V1についてはDaiの派生を図解するというレポートで少し触れました。
idleはイタリアを拠点とするチームで、2019年7月にConsenSysのハッカソンで最初のバージョンを提案して2位を受賞しました。その後、ConsenSysのプログラムに採択され初期資金を獲得しています。
idleの特徴としてidleトークンを介して利子のやり取りを行っています。この方法によってユーザーは所有権を持ったままNon-Custodialな方法でレンディングを可能にしています。
またユーザーの資金はコントラクトにプールされており、資産のリバランスはオフチェーンで金利を監視し、ユーザーの指示か1時間毎にプールのリバランスを行います。
また税制面にも気を使っています。Idle はプールをリバランスした時ではなく、ユーザーが idleトークンを換金した時にのみ課税対象となります。これは毎回レンディングプロトコルに資金を移動させるのと比較すると、とても確定申告が楽になります。(DeFiの確定申告大変ですもんね…)
Version1ではレンディング先がCompoundとFulcrumのみでしたがVersion3ではAave, dydx, Maker DSRが加わっています。
またStable Coinの種類もDaiに加え、USDT、USDCが加わっています。
またidleを使用するのに手数料はかかりません。将来的には、獲得した利息に手数料を追加する可能性があります。但し適用される手数料は上限が設定されており、利息の10%でハードコードされています。
またレンディングプロトコルを追加する際には、ルールに沿ってプロトコルのラッパー関数を作る事で簡単に追加ができます。
また、コードはQuantstampの監査済で、スマートコントラクトにバグが見つかった場合は$30,000の保険が付与されます。
2.idleで提供している2つのプラン
idleではBest-Yield(金利優先)とRisk-Adjusted(安全優先)の2つのプランを選ぶことができます。
金利優先では、各レンディングの利率を計算して、利率が最も高くなるものを選びます。
安全優先では、金利優先に加えてDeFi Scoreによる安全性スコアが加わります。計算方法は金利も安全性スコアもレンディングの中で最も高い値をMaxとして分母にし、現在のプロトコルを分子にして、その合計が最も高くなるプロトコルを選びます。
ちなみにDeFi Scoreでは0を最低、10を最高として下記の指標からスコアを計算しています。
- スマートコントラクトリスク(計45%)
- メインネットをローンチしてからの経過時間(11.25%)
- 重大な脆弱性がない事(9%)
- 4週間人日以上のコード監査がされている事(4.5%)
- 12か月以内にコード監査されたか、または監査からコードの変更が無いか(6.75%)
- コード監査の内容が公開されている事 (6.75%)
- Bug Bountyが実施されてる事 (6.75%)
- 財務面のリスク (計30%)
- 十分な担保を持っているか (10%)
- 流動性が十分にあるか (10%)
- 担保利用率に余裕はあるか (10%)
- 中央集計リスク (25%)
- 管理者のキー管理が適切か (12.5%)
- オラクルが分散化されているか (12.5%)
ここで、Best-YieldとRisk-AdjustedとStable coinの組み合わせで、どの程度の資金がプールされているかを見てみましょう。
これを見ると、DaiとUSDCはBest-YieldとRisk-Adjustedでほぼ同じAPYとRisk scoreになっています。これはAaveがAPYとRisk scoreがどちらも高くなっているためです。Aaveの優秀さがわかります。
また、Dai, USDC, TSDTのどの通貨で見ても利率優先がリスク優先の32倍の時価総額となっており、ここだけ見ると現状でのDeFiではリスクよりも利率の方が優先されているとも言えます。
3.幅広い入金サービス
EU/南米/インドからはRampを使って銀行から手数料0~1.5%で、クレジットカードはこれに加えてWyreでUSAからも直接Stable coinを購入できます。ただクレジットカードは3.2~5%と手数料が高いです。Etereum WalletからもKyberや0xで直接購入できます。
idleが今後の収益として、この換金手数料からマージンを得る事も考えられます。
idleは最適な利息を得るのが目的のため、彼らがレンディングの利子から収益を得るのは得策ではありません。元々の計画としてFiatからの変換など様々なサービスに少額の手数料を載せる計画のようです。
4.Black Thursday等の事故への対応
先日のBlack Thursdayのようにidleは事故にも注意すべきです。ここでは幾つかのケースを考えられています。
例えばレンディングプロトコルのいずれかが必要な流動性を持っていない場合、資金がロックされるのを避けるための手段が準備されています。
また緊急時用のidleトークンのmintとリバランスの一時停止、サーキットブレイカーなどの管理者権限はいくつかありますが、いかなる場合でもユーザーの資金を直接引き出したり、移動させたりすることはできません。
5.今後の計画
今後の計画は、ParaSwap、Totle、1inchなどのDEXアグリゲータの追加、Fiat対応の追加、AMMプールの実装、IdleTokensにより安全性高めるために保険との連携等を予定しています。
6.まとめ
レンディングはidleのように自動化するdAppsに資金を入れておいて、ユーザーは何も考え無いというのが今後の形だと思われます。idleを挟むことでセキュリティリスクはどうしても上がる事になりますが、利率とレンディングプロトコルのセキュリティを自動選択するメリットの方がユーザーには高いでしょう。
開発も早いため、レンディングの入り口として中心的な役割になる事を期待したいですね。
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