3Boxというスタートアップが、$2.5 million(約3億円) を調達 しました。CoinfundやPlaceholderなどが出資を決めています。
このプロジェクトについて見ていきます。
目次
- 企業について
- 3Boxのゴール
- 課題感
- 3Boxの概要
- ユースケース例
- ユースケース例 Livepeer
- ユースケース例 FOAM
- ユースケース例 Aragon と MolochDAO
- 今後の開発
- まとめ
企業について
もともと3Boxは、Ethereum上のID認証をするアプリを開発していることで有名な uPort のチームが、「Ethereum上でプロフィールを作れるようにしよう、その後はデータストレージのソリューションにしよう」とuPort内のサブプロジェクトとして始まりました。この時期に、後述する「Ethereum Profile」の最低限のプロトタイプを触ったことを覚えています。
そこからスピンオフして3Boxがスタートアップとなり、uPortチームの Michael Sena, Danny Zuckerman, Joel Torstensson の3人が共同創業者となっています。
この Danny は Identity Thief とIDと個人情報管理に関する本も最近出版しています。
3Boxのゴール
IDや個人の情報を、個人が管理できて、アプリにアップロードしたり、異なるアプリ間で情報をシェアできるようにすることを目指しています。
Google や Facebook がデータを管理するわけではなく、個人がデータの所有権を持つ、よくいうWeb3.0の世界観です。
そのための開発者用のAPIと、一般ユーザ用がプロフィールを作れるEthereum Profileなどを開発しています。
課題感
そもそも上のような世界観というか、現状のWebの書き換えがなぜ必要なのかと少し書いてみます。これは3Boxだけでなく、一般的な話です。たまにこの分野で語られる話です。
現状のwebの多くのサービスは、閉じたネットワーク内で固有のサーバを運営し、そこにデータを保存し、その場で分析や活用をしています。この手法はストレージも計算も効率的で、早いし安いし使いやすいです。
しかし、それぞれサービスごとにサーバを使うので、そこに蓄えらたデータや分析結果などは、シェアできず、融通はできません。さらに、データの所有権は、ユーザではなく当然サーバを管理するサービス側企業にあります。
「IPFSにデータを貯めて、ハッシュ値をブロックチェーンに刻み、情報を保存する」という手法もありますが、ブロックチェーンにそのままストレージするのは手数料や速度を考えるとコスト高いですし、変更できません。既存手法と比べてインターフェースも柔軟ではないため使いにくいです。
そこでブロックチェーン上ではなく、分散webのどこかに情報をおいておける領域が必要という議論がされているというわけです。
3Boxの概要
3Boxはそのような課題感から登場しています。
データを、IPFS上のOrbitDBというデータストアに保存するようにし、その分散ストレージのためのAPIを提供します。3Box.JS というAPIで、SNSやアプリのためのプロフィールを作ることができます。
これは、サービス側のサーバに保存されるわけではないので、ユーザの意思で、Ethereumアプリのログインやアプリ間の接続などに使うことができます。
※ IPFSは、ノードがつくるP2Pネットワーク上でファイルを管理する方法/プロトコル
※ OrbitDBは、そのIPFS上のデータを格納する領域
※ OrbitDBは、データ追加/更新/削除などの操作の履歴を、都度IPFS上にファイルとして保存することで、変更を局所的にしている
先程からプロフィールといっていますが、Ethereumのアドレスと紐付けることで、0x64FE664Ad95a9…468Bなどの無機質な16進数のアドレスではなく、名前と画像で構成された人間が読めるプロフィールにすることができます。
以下は例として、Foamの創業者のEthereum上のプロフィールです。現状はトランザクションのアクティビティの履歴が表示されます。
ユースケース例
FOAMではすでに使われていて、その他Livepeer, Aragon, MolochDAOなども使う予定と発言しています。ユースケース例をそれぞれ見ていきます。
Livepeer の例
Livepeerでは、トークンをデリゲート(委任)するときに、ステーキングしているアカウントの中からデリゲート先を自分で選びます(厳密にはステーキングというかトランスコーダーと呼びますが、同じように捉えて問題ありません)。
選ぶときにはいくつか判断ポイントがあります。
しっかり性能を維持しつづけ過去報酬を安定的にゲットできているか、デリゲータへの見返り分は大きいか、などです。これがデリゲータの直接的な報酬の量に影響するからです。
一応上記のパラメータは、↓の画像のように一覧で表示されていますが、さらにアカウントのプロフィールが見れて、過去のトランザクションのアクティビティやレピュテーションが見れると追加の判断材料となります。
デリゲートを募る側のアカウントにとってもフォロワー(デリゲータ)を集めやすくなります。まさにソーシャルの要素が入ってきます。
FOAMの例
FOAMは分散型な手法で、位置情報をブロックチェーン上にもってくるプロジェクトですが、
FOAM Leaderboard ですでに3BoxのEthereum Profileがつかわれています。
コミュニティ要素、ソーシャル要素をもたせることができ、HeliumもFOAMもコミュニティの草の根が継続的に必要なプロジェクトには大切になってきます。
Aragon や MolochDAOの例
AragonもMolochDAOも、ただの無機質な16進数ではなく名前と画像でやり取りできるようになります。
以下は、Aragonを使ったDAOです。何をしているかというと、Livepeerのトランスコーダーとデリゲータで組織されたDAOで、入ってきた報酬をどのように分配するなどAragonを使ってガバナンスしているようです(以下はテストネットですがメインネットでも運営しているそうです)。
https://rinkeby.aragon.org/#/livepeerdelegator/0x4a7335f3ecb43b685526c1b39043bf696c78c641
こういったDAOを運営していく上で、必ずしも匿名である必要はない場合に、3Boxを利用して、Ethereumアドレスだけでなく、名前と画像でやり取りができるようになります。過去のレピュテーションなども参照にできるようになるでしょう。
これは主に、開発者のDAOや、分散型プロトコルのチームの使い方がメインになるかもしれません。
今後の開発
他にも細かなところを進めて行く予定になっています。Ethereumのマルチアカウントをサポートすることで、古いアドレスから新しいアドレスへ3boxアカウントを移行できるようになる予定です。またコントラクトウォレットもサポート予定となっています。
その他には分かりやすいところでいえば、メッセージやグループ、プライベートメッセージや、掲示板など、ソーシャルの機能を入れていく予定となっています。更に面白いのは、Ethereumアドレスに「フォロー」という概念も作ろうとしています。
またアドレスと保有しているENSを紐付けや、モバイル対応もロードマップに入っています。
まとめ
Vitalik は2019年5月のブログで、「(企業やサービス提供側にとって)ユーザデータはアセットから責任になってきている」と書いています。
新しいWebは、分散型Webの上でユーザがデータを管理し、アプリをまたいで情報が蓄積され、ユーザが選んで提供し、行動の履歴やクレジットヒストリー、評判などが使い回せるようになるかもしれません。
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