進化が目覚ましいArgent WalletについてShingenさんに執筆いただきました。

Argent WalletはMobile Contract Walletです。

何度かTokenLabでも新機能について紹介していますが、Mobile Consumer向けという点にフォーカスにして所有権を間接的に管理させつつ、上手く利便性を前面に、拡張機能も残して居ると感じられます。
運営会社はArgent Labs Limited、拠点はLondonで主要メンバーもそこに集まっている模様です。
2018年末の情報ですが、企業情報はここが一番詳細でした。
https://suite.endole.co.uk/insight/company/11093638-argent-labs-limited
Argentの公式サイト上では下記の6社から出資を受けている模様です。北米や中国のスタートアップとは毛色が異なる印象です。

Argent Walletの機能は日々拡張されていく為か、現時点での要約はまだ見た事がありません。
そこで今回は改めて要約を紹介します。
下記の基本機能を見れば解りますが、非常にユーザーフレンドリーです。ETHを意識する事なく送信や交換が可能、且つArgentユーザー同士であれば(厳密にはENS対応アドレスであれば)、送金アドレスもHuman Readableなものが扱えます。
送金手数料もMeta Transactionである為、ユーザーが手数料の調整をする事無く概ねスムーズな着金が見込めます。
概要
基本機能
- 種別: Mobile Contract Wallet
- Tx手数料: Meta TransactionによりArgent側で負担
- ENS対応: .eth/.xyz (ENS側Resolver準拠)
- Contact List: ENS/ETHアドレス/Argent User
- Recovery/Import/Export: 秘密鍵ではなく、Argent Guardian等により管理(後述)
- 対応トークン: ETH/ERC-20/ERC-721
- Walletアプリ起動時にはパスワードロック。生体認証対応
- Updateは基本的にAppStoreからでなく、アプリ上でモジュールを組み込む様に行う
その他の機能
- Guardianの追加による様々な承認設定
- Token Swap機能: ETH↔ERC-20 (Kyberを利用で手数料有り。ERC-20同士は無し。ただし後述するWallet Connectを使えば様々なSwapも可能)
- Compound: Lendingのみ
- MakerDAO: DAIのBorrowingのみ (2019年12月現在、旧CDPとSAIのみ対応)
- クレカによるETH/ERC-20購入: 手数料約5$+α (MoonPayを利用)
- Daily Transaction制限設定(後述)
- Emergency Transaction: 事前に準備する事で指定アドレス側からArgent Wallet上の対象アセット引き出しが可能 (紹介記事)
- Wallet Connect対応Dappsであれば通常のWalletの様にArgent内蔵以外の機能が利用可能。その際でも、処理実行時にはArgent Wallet側で承認を行う (紹介記事)
以降、主にセキュリティ周りの機能について細かく解説していきます。
Guardian機能
Argentでは秘密鍵の管理を直接ユーザーが行う事がありません。その代替えとなるのがGuardianです。

Guardianとして利用可能なのは下記の通り。
デフォルト以外は登録解除共に24時間の待機時間が発生します。
またGuardianの数が増えてくるとMultisigの様に承認時には過半数以上の承認が必要となります。
- Argent Guard: 初回作成時に登録するデフォルトのGuardian。SMSとメールアドレスを登録してこの2つをセットで利用
- Guardian: 他のArgentユーザーをGuardianとして登録
- Metamask/Trezor/Ledger Nano: WalletをGuardianとして登録
Argent Security Center
https://security.argent.xyz/ ではArgent GuardやGuardianを利用した様々なセキュリティ関連の機能が用意されており、Metamask/Trezor/Ledger Nano等による承認も含めて殆どの承認作業はここから行う事になります。

Argent Security Centerから利用出来る機能の一覧と対応表

Wallet Recovery
最も重要なGuardianの用途として、Argent Guardを使ったWallet Recoveryの流れを紹介します。
感覚的にはほぼ一般的なサービスと同様で、Crypto Walletに不慣れなユーザーでも扱えるでしょう。
更にRecovery Walletが完了すると、新たなRecovery先のArgent Walletが有効に、それまでActiveだった同ユーザーのArgent Walletは初期化されます。つまり1ユーザーに対して稼働出来るArgent Walletは常に一つという事です。
- 初期状態のArgent Wallet AppからRecover Walletを選ぶ
- Argentのユーザーネームを入力
- SMSに届いたコードを入力
- 登録メールアドレスに届いたメールから承認
- リカバリーが開始され、36時間後に完了する
※リカバリープロセス中、旧Deviceからはリカバリーのキャンセルが可能

Lock/Unlock a Wallet
この機能はArgent Walletが入ったスマートフォンを紛失した場合等に利用します、Argent Security CenterからLock a Walletを開き、好きな認証方法でLockを適用します(尚、デフォルトではArgent Guardのみが有効です)
Lockが適用されると、対象ユーザーのActiveなArgent Walletは5日間Lockされます。その間に新たにRecover Walletを行って移行するという事になります。前述した通り、Recoveryが完了すれば旧DeviceのArgent Walletは初期化され、新Deviceの方のみ有効になる為、これで退避が完了と言う事になります。
ただし、Lock期間中の5日間はRecovery完了後もLockされたままです。
デフォルトのArgent GuardではUnlockが出来ない為、何らかのGuardianを登録しておく事を薦めます。
Daily Transfer LimitとApprove Transfer
Argentでは転送金額に対する1日の限界量を設定出来ます。
そして下記の通りGuardianによる承認を利用する事で、実質Guardianを送金認証の様に利用できます。
加えてホワイトリストアドレスに対しては認証不要という設定もContact毎に可能です。
- 限界を越える送金はGuardianから承認を得る事で実施可能。ただしArgent Guard(SMS&Email)は承認対象外
- Contact Listに登録済み且つTrust適用済みの宛先≒実質的なホワイトリスト
Daily Transfer Limitを前提とした流れとしては下記の様になります。

Argentの各セキュリティ関連アクションに関する待ち時間
セキュリティの観点から、何らかの設定変更の反映にはほぼ待ち時間が発生します。
(LockとUnlockのみはほぼ即時)

Emergency Transaction
この機能は指定したアドレス側から予めArgent側で発行したDataを使って、指定アドレス側からDataを使ったTransactionを実行する事で、Argent Walletのコントロールを失った状態でも資産を回収出来るという仕組みです。
概要はTokenlab内でも以前紹介しています。 →紹介記事
ここで改めて注意点として上げておく点としては、Emergency Transactionの対象となる資産は、Dataを取得する未発行Transactionのアセットの分のみという事です。
例えば1ETH持っている時に1ETH分の送金に対するDataを取得しても、その後Walletの資産が10ETHに増えた場合、この機能を使って回収するなら改めて取得する必要があります。
また、回収を行う場合にはData値の入力が出来る必要がある為、全てのWalletで実行可能ではありません。公式の紹介記事ではMEWを使っていました。
便利な機能ですが万能ではないという点に注意です。
総括
以上、Argent Walletの紹介でした。
これが最終形か、と訊かれれば微妙なところではありますが、もしもこういうWalletがある程度のサポートがついた上で新規ユーザーに使われるのであれば大分暗号資産に対するイメージも違うのではないかと思います。
そしてContact Walletを使う事で常に相反する利便性とセキュリティの良いとこ取りが、かなり良いところまで改善出来ると実感出来ます。
個人的には、初心者が扱うにはHardware WalletよりもArgent Walletの方が良いのではないかと感じました。
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